インタビュー一覧

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著者インタビュー


『いい匂いのするITソリューション』

コベルコシステム株式会社 奥田兼三 氏

新刊紹介

「名工」、「名匠」、「職人気質」。
日本のものづくりの現場において、これらがとても重要な存在であることは言うまでもない。名工たちがもつ「秘伝の技術」なくしては、現在の日本の文化や産業が形づくられることはなかっただろう。
しかし、この「秘伝の技術」にも、目に見えない落とし穴がある。
「秘伝」なるが故に、個人の能力や経験のみに支えられた「暗黙知」によってその技術が形成されているという点である。
暗黙知とは「経験や勘などに基づいた、言葉で説明することが難しい知識」のことをいう。「秘伝の技術」が「暗黙知」のままである限り、いくら優れた技術や知識があっても継承していくことは難しい。これは由々しき問題であろう。
そして、この暗黙知の問題は、職人の世界のみならず、企業においても存在している。
この「暗黙知の共有化」という難問に真っ向から立ち向かったのが、ITソリューションベンダーのコベルコシステムである。
同社取締役社長の奥田兼三氏に、「暗黙知のアセット(資産)化」を経て、コベルコシステム独自のITソリューション=「秘伝のタレ」にいい匂いが立ち込めるまでの秘話を伺った。


まず、「秘伝のタレ」とは一体なんなのでしょうか?コベルコシステムさんはITベンダーですよね?

奥田氏(以下、奥田) そうですね、お客様にもそのネーミングはよく驚かれます(笑)。「秘伝のタレ」とは、当社が提供する代表的な27のITソリューションのことです。社内にあった暗黙知をアセット化することで、お客様にとっても社員自身にとってもわかりやすく、ご提案しやすいソリューションパッケージに仕上げることができました。

経験や勘に裏打ちされた「暗黙知」は、ものづくりの現場ではよく見られるものだと思います。これをなぜアセット化しようと思い至ったのでしょうか。

奥田 コベルコシステムは、1987年に神戸製鋼所のシステム部門から分社独立した会社です。神戸製鋼所時代から受け継いできた品質への徹底したこだわりと製造業独特のノウハウが社員一人ひとりの頭の中に蓄積されており、それがコベルコシステムのひとつの強みでもありました。しかしグローバル化の進む市場において、もはや日本の職人気質だけでは同業他社と差別化を図る最たる要因にはなりません。社内の「暗黙知」をどう顕在化させるかということが、競争力を確保する上でとても大きなテーマとなってきたのです。
さらに2002年に日本IBMが資本参加したことによって、「潜在的な価値を形式化し、さらに標準化することにより、全社的な価値としてお客様に届けることに意味がある」というIBMの文化がコベルコシステムにも入ってきました。
神戸製鋼所と日本IBMのDNAが融合することによって、「暗黙知」をアセット化する取り組みが始まったのです。

社員一人ひとりの「暗黙知」をアセット化するまでには大変なご苦労があったのでは?

奥田 ええ、大変でした。準備段階から数えると、アセット化の確立まで10年の歳月が掛かっています。しかし、個々人の技術や経験を会社の財産として集積・整理・共有する、そういった「知の循環」が実現すれば、その重ねてきた苦労以上のものが得られるはずだと信じてアセット化を進めていきました。知の循環が確立されれば、新たな価値が自然と創出されるようになりますし、会社が組織全体として著しく成長できることは間違いないですから。

今回はそのアセットビジネスへの取り組みを1冊の本にまとめられたわけですが、試行錯誤の上でつくりあげてきたその歩みを公開してしまうのは惜しくないのでしょうか?

奥田 いえいえ(笑)。私たちはこうしたアセットビジネスへの取り組みノウハウを社内だけにとどめておくべきではないと考えています。ITサービスに携わる企業はもちろん、幅広い業種業態の多くの企業の皆様に、アセットビジネス推進の過程で生じた混乱や課題、そしてそれらの打開策をお伝えして参考にしていただけたらと思い、今回の出版に至りました。

なんとも太っ腹ですね。そして、アセット化が社内によい影響をもたらすはずである、というコベルコシステムさんの自信も伺えますが。

奥田 お客様接点である現場をなにより大切にしながら、切磋琢磨してお客様の期待に応えていく。そんな日常の「凡」とも言える仕事を、可視化し共有化するところから、私たちはアセット化を始めました。それが社員一人ひとりに刺激を与え、IT技術をさらにレベルアップする活動につながり、組織力が強化される結果になりました。
実は、「秘伝のタレ」という名称が公表される前に「コベルコシステムのソリューションはいい匂いがする」とお客様に言っていただいたことがありました。これは大変うれしいお褒めの言葉であり、私たちの自信となっています。
「凡」を突き詰めることで、お客様の期待を超える「非凡」な活動にまで持っていくことを、これからも目指していこうと思います。

お客様にもコベルコシステムの目指すサービスが伝わっているのですね。では今後はどういった企業展開をするおつもりでしょうか

奥田 お客様の必要とする価値をコベルコシステムがつくりだすためには、既存・新規にこだわらずさまざまな企業とのコラボレーションが重要になってくると考えています。革新的な商品やビジネスモデルを生み出すためには、ナレッジの共有を自社内で徹底するだけではなく、他業者ともアライアンス(提携)を組んでナレッジのネットワークを広め、経営をより強固にしていくことが重要です。私たちが次に目指すところ、それはナレッジ・エンタープライズです。


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