インタビュー一覧

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著者インタビュー


『ガスワン三代 時代に流されない、地続き経営の極意』

株式会社サイサン 代表取締役社長 川本武彦 氏

新刊紹介

創業65年、売上高500億円。これだけの規模となりながら、創業から現在までずっと一族経営、非上場、大家族主義を貫いている企業がある。それが、埼玉に本社をかまえるLPガス業者のサイサンだ。
一見して古臭くも思える経営方針をもつこの企業が、好況を保っている要因はなんだろうか。
サイサン三代目社長の川本武彦氏にお話を伺った。


まずは、今回の書籍『ガスワン三代』を出版することにしたきっかけから教えてください。

川本氏(以下、川本) サイサンの歴史は、第二次世界大戦が終わった年に始まりました。戦後の荒廃した日本社会の中で祖父が小さな個人商店から商いを始め、それを父が、そして私が引き継いで今まで育ててきたのです。ですが、日本のエネルギー政策や地球環境問題などを考慮しながら未来を頭の中に描いてみたとき、エネルギー業界やサイサンは今、大きな岐路に立っているのではないかと思いました。2010年は創業65周年、創業者である川本二郎の生誕100年、そして三代目である私の社長就任10年目、とサイサンにとって色々な意味で節目の年です。ですから、この機会に私の目からサイサンの65年を振り返り、原点に立ち返りたいと思って書籍の執筆を決めました。時代が大きく転換していく中で、一中小企業が持続的な成長と発展を続けていくために、何が求められ何が必要とされているのか。サイサンがこれまでに行なってきた取り組みのどこかに、必ずや未来へのヒントが潜んでいるはずだと思ったのです。

では、足跡を辿りなおした今、売上高500億という企業にサイサンが成長・発展したいちばんの要因は何だと感じていらっしゃいますか。

川本 成長を続けてこられたいちばんの要因も、私たちの原点も同じく、「お客様第一主義」にあるのではないかと思います。これこそ川本家が三代にわたって貫いてきた経営理念であり、サイサンの遺伝子だと言えるのではないでしょうか。地元や地域に寄り添いながら、人とのつながりをなによりも大切にする。その地道な経営哲学にこだわってきたことが、今の500億という数字にとつながったのだと感じています。

サブタイトルにもなっている「時代に流されない地続き経営」という点についてはいかがでしょうか。

川本 そうですね、それもサイサンが不況の中でも大きく業績を落とさずにいられた要因だと思います。組織は巨大になるほど柔軟性を失ってしまいます。その点、1つ1つは小さくても、それぞれリーダーをもって自立的に運営されているいくつもの組織が連携をしてグループを形成しているほうが、フットワークがよくしなやかな強さをもつことができるのです。これを我われは「群れの経営」と呼んでいます。時代に流されないというのは、変化をしないという意味ではありません。お客様第一主義などの信念は曲げないままで、時代に合わせてしなやかに変わっていくことが大切なのです。

「群れの経営」と「地続きの経営」とはどう関わっているのでしょうか?

川本 群れの経営は、見方によっては「多角化」という言葉でくくることもできるでしょう。ですが、我われサイサンは「地続き」で群れを増やしていくことにこだわってきました。例えば、ガスそのものの販売から枝葉を伸ばし、LPガスの設備施工からガス供給までを一貫して引き受ける事業を立ち上げるというように、メインの事業に関連した事業をどんどん展開させてきたのです。軸をぶれさせずメインのLPガス事業に力を注ぐことで得たお客様の信頼が、関連事業の売上につながり、関連事業で得たお客様がLPガス事業のお客様にもなってくださる。お客様第一主義でそういう好循環を築いてきたことが、安定した成長につながったのでしょう。

なるほど。では、最後にこれからのサイサンの展望について教えてください。

川本 祖父と父は、経営者としてカリスマでありスーパーマンでした。私が社長に就任したとき、「とても二人のようなカリスマにはなれない」と率直に思いました。ですが、一方でサイサンは、カリスマ経営で機能していく適正規模を超えた企業に成長してもいました。そこで私は「個人商店の強みと科学的合理性を的確に融合させていく」のが私の役割であろうと考えたのです。科学的合理性を取り入れて事業を合理的に運営していきながらも、「一族経営、非上場、大家族主義」という個人商店の強みも大切にする。そしてなにより「すべてはお客様の幸せのために」というサイサンの遺伝子を中心において、次の時代に進んで行きたいと思います。どれだけ時代が変わっても、企業規模が大きくなっても、この遺伝子がある限り、サイサンは常にお客様のそばで、なくてはならない地域のエネルギーパートナーとしてあり続けることでしょう。