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著者インタビュー


『香りを創る、香りを売る 創業200年、香料創りの現場から香料というビジネスを語る』

塩野香料株式会社 代表取締役社長 塩野秀作 氏

新刊紹介

人の五感の中で、最も意識されやすいのが視覚だろう。目に見えるもの、手にとれるものは認識が容易だ。では、嗅覚はどうだろうか。
日ごろはさほど意識しないが、実は嗅覚は感情に対して訴える強い力がある。緊張を解きリラックスに導くためのアロマもそうだが、ふと香った花の匂いで、遠い昔の記憶がまざまざと蘇る、という経験のある人も多いだろう。
生活の中でごく当たり前に受け止めているさまざまな香り。実はその中には、本来の香りを再現するために香料を使っているものも多い。塩野香料は香料を扱って100年の歴史を持つ香料専門の会社。長年の間に蓄積されたさまざまなデータやエピソードを添えて、香りにまつわる知られざる世界を解き明かす本を世に送り出した。この本について、著者である塩野香料株式会社の代表取締役社長・塩野秀作氏にお話を伺った。


香りで生活に豊かさをもたらす仕事

まず、今回この本を出版されたきっかけを教えていただけますか。

塩野氏(以下、塩野) 私が社長を務めております塩野香料は、2008年に創業200周年を迎えた歴史ある会社です。薬問屋から始まり、この100年ほどは香料の製造に特化して事業運営をして参りました。そんな中、世間一般の方は香料や香りについて意外に認識が低いことをつねづね残念に思っていました。この本を通して、一人でも多くの皆さまに香料についての正しい知識が伝えることができればと思い、出版することを決めました。

香料会社には調香師という職業の方が在籍されているとのことですが、どういった環境でお仕事されているのですか?

塩野 我が社には調香師が全部で20数名在籍しております。飲料や菓子などに使用する食品香料と、加工食品に香りと味をプラスするための呈味香料、化粧品やバス・トイレタリーなどに使う香粧品香料の部署に分かれておりまして、それぞれに調香師が所属しています。もちろん、それぞれの部署に営業担当や事務担当もいます。そのあたりは他の会社と同じですね。

「香り」という商品を扱う上で、気をつけていることはありますか?

塩野 形のあるものを売るのと違い、香料には形がなく、すべてが0からのオーダーメイドです。形のない香料のイメージをお客様からいかに正確に引き出せるが大切になります。そのため、営業担当は調香師ともよく話しますし、日ごろから感性を磨く努力をしています。言葉で香りのイメージや強弱の程度などをお客様とやりとりしなくてはならないからです。
また、「香りを売る」際、香りそのものだけではなく、その香りを開発したストーリーも一緒に売るようにしています。開発担当者であるお客様は、自分が納得したとしても社内で上司や他部門の方を説得しなければなりません。そうした際に、どのような思いで香りをつくったかという開発のストーリーがあれば、より説得力のある提案ができます。今の時代は香りも多様化し、人を納得させるのが難しくなってきました。ですから、これからの時代は開発ストーリーにエビデンスも加えながら、より説得力のある香料であることをアピールすることも大切なことだと思っています。

香りに携わる仕事をなさっていて、やりがいとか喜びを一番感じるのはどんな時でしょうか。

塩野 香りというのは目に見えないものですし、たとえば袋をあけてしばらくしたら飛んでしまったり、常に変化してしまったりするものです。また、製品の原材料に「香料」とあっても、どこの会社で創られた香りかを意識する人はほとんどいないのではないでしょうか。しかし元からあった香り以上に本物らしく香り付けをしていることに気がつかない、という状態は、本来香りのあるべき姿です。ですから、香りを創り出す仕事の喜びは、製品が世に出る前、「香り」を創り出す過程にあると思います。調香師は、クライアントの難しいオーダーにきちんとお応えできたときなどに達成感を感じます。私も、街で当社が関わった製品を飲んだり食べたりしている場面を目にすると、誇らしい気持ちになります。自分が関わった製品であることを社外の誰かに話すことはありませんが、不特定多数の方に喜んでいただける仕事であることは大きなやりがいにつながっています。

最後に、一言お願いします。

塩野 塩野香料は長い歴史を持つ会社なので、本を出すとなったら社史のようなものになりがちなのですが、この本についてはなるべくそういう部分を減らし、世界の香りの歴史と、世の中に存在する香料の実際、香りを創り出す過程にスポットを当てています。専門書というよりは読み物として、一般読者の方にも楽しんでいただけるような本に仕上がっていると思いますので、ぜひ、一度お手にとっていただけたら嬉しく思います。

塩野秀作(しおの・しゅうさく)

塩野香料株式会社 代表取締役社長・塩野フィネス株式会社 代表取締役会長。
1952年、兵庫県生まれ。1976年、慶応義塾大学商学部卒業後、出光興産株式会社入社。
1983年、同退社し塩野香料株式会社入社。
1990年、取締役に就任、代表取締役専務、代表取締役副社長を歴任。
2001年、代表取締役社長に就任、現在に至る。


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