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著者インタビュー


『調理師という人生を目指す君に』

新宿学園 新宿調理師専門学校 学校長 上神田梅雄 氏

新刊紹介

板場修業12年間の後に、銀座「阿伽免(おかめ)」の料理長を皮切りに24年間、幾多の料理店の総料理長を歴任して来た、上神田梅雄氏。卒業後36年を経て、母校・新宿調理師専門学校へ学校長として招聘される。その豊かな経験に裏付けられた、卓越した技能と見識、教員の先頭に立って情熱的な指導・教育をし続けている。

今回、生徒達へ送る激励のメッセージ集『調理師という人生を目指す君に』を発刊、その込めた熱い思いを伺った。


調理師とは、食卓に笑顔の花を咲かせる仕事です。

学校創立50周年記念出版となりました。卒業生として初の学校長への就任、そして本校初となる学校長の著作となったわけですが、まずは書籍発刊における率直なお気持ちをお聞かせください。

上神田氏(以下、上神田) 調理師は素晴らしい仕事です。お料理を通じて、他人を幸せにすることが出来る、とても素敵な仕事です。
収入だけでは測れない、生涯を懸けるに値する仕事です。
だからこそ、真心を捧げ尽くす必要があり、命を懸ける覚悟がいるんです。だから颯爽として凛として、カッコいいんですよ。
そのことを少しでも多くの人に伝えたいと思い、筆を執りました。

この度の発行本は、先生の「書」が使用されています。 全編この書籍のために書き下ろしたものと伺いましたが、その思いについてお聞かせください。

上神田 生徒達へ呼び掛けとして校内に掲示していた「書」を一冊の本にまとめたいと思ったとき、ひとつひとつの言葉に強い思いを込める意味でもぜひ書き下ろしにしたいと思いました。
生徒達はやがて学校を卒業し、飲食サービスの現場に出て行くことになります。しかし社会ではさまざまなハードルが用意されています。これは、誰もが自分の力で越えなければいけない、社会人としての通過儀礼のようなものなのです。いつか訪れるであろう、一つひとつの困難を乗り越えて進む卒業生達を勇気づける「心の杖」の一杖になればという願いです。「書」に現わされた背景と、それぞれの言葉が紡ぎ出された思いを解説として付け、出版させていただきました。

このような人生訓を掲げた書籍は人気で出版点数も数多くありますが、調理師を目指す子どもたちにとっては、同じ調理師であり、料理長まで登りつめ、そしていま養成施設の学校長が語る言葉であるからこそ、親近感がわき、言葉に説得力を持たせることができるのではないかと思いました。

上神田 わたしが調理師を目指したのは20歳を超えてから。当時としては、決して早いスタートではありませんでした。それに、私はもともと手先が器用ではなく劣等感の塊りでしたから、匠を目指す仕事が出来るのか不安でした。しかし、いま振り返って思うのは、他人より不器用だという思いと、他人より劣るという自覚が、僅かながら他人より優るための努力を継続出来たのかもしれません。弛まぬ努力が精神を鍛え、後進育成への熱い愛情を育んでくれたのかもしれません。

本書の中でも繰り返し語られる「地味な仕事を疎かにしない」といった、「徹底的に目の前の小さなことに必死に取り組む姿勢を大事にすることが、成功への道である」ということが先生自身のご経験から伝わってきます。

上神田 大切なことは感謝の言葉です。自分から進んで「ありがとう」「おかげさまで」といった感謝の言葉を発していくと、先に自分の耳に聴こえるのですから、これはもう素敵なご利益を頂いたようなものです。もちろん幸せ言葉を掛けられた相手も気分がいいでしょうが、何より最も先に鮮明に聴くことができた自分の気分がいいものです。元気が出ますし、勇気も出ます。感謝の言葉は、心のサプリメントです。一方、いつも不満が先に口をついて出ているということは、自分の心にボディーブローを打ち続けているようなものです。それでは自滅してしまいます。

最後に一言、メッセージをお願いします。

上神田 毎年調理師学校から数多くの卒業生が巣立っていきますが、彼らの多くは志半ばにして調理師の道を去っていきます。甘えた心をもった若者たちにとって、社会人として出会う新たな環境はことさら厳しく感じられるかもしれません。睡眠時間を確保することさえままならない勤務が続くこともあります。満足に休日さえ取れない繁忙期が訪れることもあるでしょう。先輩などの心ない一言に傷つくこともあるかもしれません。しかし、それらは先輩調理師たちも出逢い、乗り超えて来た道です。初心で抱いた、「店を持ちたい」「料理長になりたい」、そして「お客さんに喜んで頂きたい」「幸せを感じてもらいたい」という願い。誰もがそんな周囲から応援される素晴らしい「夢」をもって、調理師人生の第一歩を歩み出した筈です。少々の困難に出遭ったからといって、簡単に自分への約束を破るようでは、何も出来ません。困難に出遭ったときにこそ、自分の心が試されるのです。
私は、他人を幸せに出来るような「心構え」と「覚悟」をしっかりもった大人になるための教育に力を入れていきたいと思っています。そして、調理師という同じ道を目指す、若き「庖友」の活躍を心から祈り続けたいと思います。

上神田梅雄(かみかんだ・うめお)

新宿調理師専門学校校長。
1953年、上神田家10人兄弟の7番目として、岩手県普代村に生まれる。
1971年、岩手県立久慈高等学校卒業、実家の家計を助けるため、製綿業・雑穀業に従事。
1973年、上京し、新宿調理師専門学校・夜間部に入学、「学僕」として学ぶ。
1975年、卒業と同時に、和の料理人、故・西宮利晃氏に師事し、12年間・11店補の厨房にて修業を積む。
1987年、銀座「会席料理・阿伽免」にて料理長となり、その後24年間・5企業にて総料理長として腕を振るう。
2011年、学)新宿学園 新宿調理師専門学校・校長に就任、現在に至る。
著書:『四季のおもてなし料理』保存版
所属:宮内庁御用 調理師松和会 相談役
業界:社団法人・日本料理研究会 技術師範
委嘱:希望郷・いわて文化大使
稼業:“物言わぬ天の意志を この一皿に現わす仕事”


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