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著者インタビュー


『日本一小さな整備工場が業界を動かしたとき』

株式会社ホリデー 代表取締役社長 松川陽 氏

新刊紹介

いまや車検の常識となったユーザー立会い型短時間車検。短時間・低価格で車検ができる利便性の高いサービスとして知られているが、かつて「車検」は高価格で不透明なものだった。
ユーザーを無視した車検の常識への義憤に燃えた松川社長は、1994年に短時間・低料金の「ホリデー車検」を開始。業界の悪弊への決別を宣言した。
新しい常識を一から築いた松川陽氏に、書籍出版の背景とその思いを伺った。


ホリデー車検はいまや全国270のFC店舗を数える車検チェーンを展開されており、松川社長は立合い型短時間車検の第一人者と言われています。どんな思いでこの車検を始められたのですか。

松川氏(以下、松川) 今から45年前、私がホリデーの前身である双輪自動車に入社した時、整備士たちの仕事に対するモチベーションの低さや工場の劣悪な環境に、衝撃を受けました。お客様や社会の安全を守るという重い使命を持った整備士の仕事を、信頼される、尊厳のある仕事にしたいと心から思いました。お客様に喜ばれる車検を行う、そのために車検業界を変えなければならない、という思いで走り続けてきました。

なぜ車検業界を変えたいと思ったのですか。

松川 最大のきっかけは、ユーザー車検代行の破格の値段での登場に強い危機感をおぼえたことでした。自分たちで整備を行うことなく、仲介業のみで商売を行うやり方がゆるせなかったのです。そんなことをしたらユーザーからの信頼を失ってしまうだろうと。
しかし、同時にその仲介業者にはとても大切なことを気づかされました。旅行業の片手間に仲介業を行っていた社長から指摘された、「車ばかり見ている商売」という言葉は忘れられません。規制緩和の波の中で、既得権益に胡坐をかいていた、整備業界の悪しき慣習を絶つという信念が芽生えました。。

その信念を見事実現されました。

松川 1995年の道路運送車両法改正で、「前検査・後整備」が可能となったことに着想を得ました。車検それ自体の時間は実は極めて短く、長い拘束時間は、部品待ちや工場内のリフトの空き待ちなどに取られていたのです。1万9800円の車検を実現する、という目標を持ったことで固定観念に縛られていたことに気がつきました。また、ユーザー代行車検に勝つためには、土日祝日営業が必須でした。社員たちと知恵を絞って、お客様の立場に立った徹底的な合理化を進めたことで、「1万9800円」「60分」「完全予約制」「土日祝日営業」という、ホリデー車検が出来上がったのです。

周囲の反応はいかがでしたか。

松川 1万9800円という価格に対して、整備業界からのすさまじい抗議が続きました。彼らの主張は一貫して「低価格が業界秩序を乱す」というその1点のみでした。

業界を敵に回す覚悟というのはどのようなものだったのでしょうか。

松川 一つには、新聞社を辞めてここに来ているのだという思いがありました。あの時、業界の悪弊を正せなかった。あの悔しさがいつも心にありました。どんなに反対されても、ここで逃げたらあの時と同じになってしまう。業界の悪弊を正すことが、ひいては業界の社会的地位の向上になるのだ、と。経営者としてこの業界に責任を持ちたい、整備士たちにも誇りを持って仕事をしてほしい、という思いが決してあきらめなかった最大の理由です。

1996年には全国初となる車検サービスのフランチャイズ展開がスタートとなりましたね。

松川 もちろん一社で利益をとることもできたのですが、FCとしてこのノウハウを全国に展開することにこそ意味があると感じました。整備工場とユーザーとのこれまでの結びつきを考えてみると、とてもパーソナルな関係がそこにはありました。会社として付き合うのではなく、個人としてお客様と向き合う。この関係がある限り、整備工場は一定以上大きくなれないのです。大きくなりすぎるとCS(顧客満足度)が低下するからです。
こうした限界をチェーンシステムは打ち破ることができるのです。

最後に一言、メッセージをお願いいたします。

松川 双輪自動車の工場に初めて行ったときに見た、つまらなそうに整備をしている整備士や感情のない受付嬢の応対、自信がなさそうな営業マンたちの姿が、今思えばホリデー車検のスタートでした。整備士は、世の中に必要な仕事であり、お客様の命を守る仕事であり、誇りを持って働くべき仕事なのです。従業員が魅力を感じないような職業に、お客様が信頼を寄せられるはずがない。これからの整備業は、誇りを持って働くことができ、また車のホームドクターのように信頼される職業でなければなりません。現在、ホリデー車検は270ものFC店舗加盟がありますが、それは多くの人が整備業のこのような役割に気が付き始めているからでしょう。旧体制から脱却してここまで来ましたが、これが今もなお整備業界は変革の時を迎えています。ホリデー車検のこの物語が、次なる変革者の背中を押すものとなることを、そして明日の整備業界、ひいては社会全体が元気になることに少しでも貢献できることを願っています。

ありがとうございました。

松川陽(まつかわ・あきら)

株式会社ホリデー代表取締役社長。
業界新聞の記者を経て整備会社である双輪自動車へ入社。
営業として新規顧客開拓に注力し、1972年、同社社長に就任。
1995年、業界に先駆けて「対話型立会車検」である「ホリデー車検」をスタート。
当時業界からの猛烈な反対を受けたが、のちに安価で短時間で済ますことのできる対話型立会車検は業界の常識となった。
現在はホリデーフランチャイズチェーンにも注力している。


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