インタビュー一覧

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著者インタビュー


『イノベーターズ 革新的価値創造者たち』

株式会社ワークハピネス 代表取締役社長 吉村慎吾 氏

新刊紹介

「古今東西、様々なイノベーションの裏側には必ずイノベーターがいた」著者吉村慎吾氏は明言する。
戦後、焼け野原というカオス(混沌)な状態だった日本。そこで生まれた多くのイノベーターたちの力で、世界第二位の経済大国へと成長を遂げた。しかしそれと同時に、成長を遂げたオーダー(秩序)な状態は、多くの企業からイノベーターの居場所を奪ってしまった。
もう一度日本にイノベーションを。このように感じている企業人は少なくないはずだ。今最も求められているイノベーターを継続的に生む組織の法則について、イノベーター経営者として数々の企業の組織変革を実践してきた吉村慎吾氏に伺った。


まずは、『イノベーターズ 革新的価値創造者たち』の出版のきっかけを教えてください。

吉村氏(以下、吉村) 現在の日本の状況に危機感を持ったことがきっかけです。日本は、戦争で焼け野原となったカオスの状態から、世界的に影響力を持つ経済大国へと成長してきましたが、それはイノベーターたちの活躍があったからです。ソニーの井深大や盛田昭夫、ホンダの本田宗一郎などがその好例です。しかし組織や経済規模が大きくなると、同時に秩序などオーダーの力が強くなり、イノベーションは起こりづらくなります。イノベーションは、カオスとオーダーの間のchaordic path(ケオディクパス)で生まれるのです。カオスさを欠いたままこのまま保守的なサラリーマンばかりが増えていくと、日本の経済力はやがて地に落ちるでしょう。

イノベーターが生まれる組織の法則、ということですが、イノベーターとはどのような人なのでしょうか。

吉村 自らの出したいものを出す勇気、理想を諦めない勇気を持った人のことをイノベーターと呼んでいます。
そもそもイノベーションは「技術革新」と訳されていますが、それは「革新的価値創造」へと改められるべきです。イノベーションとは、新しい価値の創造です。アップルやソニーはマーケティングをしないことでも有名ですが、見たこともないまったく未知ものを、消費者が求められるはずがない。イノベーターたちが、自らの価値観に合致した、本当に欲しいものを世に出すことでイノベーションは生まれます。試練に負けず、本当に作りたいもののために挑戦し続けられる人を、イノベーターと呼ぶことができるでしょう。

イノベーション、イノベーターというと、一般の人にはとても難しいように感じられます。

吉村 イノベーションとは異質なものの組み合わせです。アイデアを生み出すのに天才は必要ありません。すでに存在している一般的だけれど異質なものを組み合わせることからイノベーションは生まれるのです。例えば、紙コップとチキンラーメンという一般的なもの、異質な組み合わせからカップヌードルというイノベーションが生まれました。これは人との関係においても同様です。安藤百福がカップヌードルを開発することができたのは、チキンラーメンを紙コップに入れて食べているアメリカ人の姿を目にしたことがきっかけです。異なる文化的背景や価値観を持つ人やものを尊重することで、大ヒットとなるイノベーションが生まれるのです。

イノベーションを生む組織について教えてください。

吉村  明確なミッション、限りなく少ないルール、異質の尊重、という3要素が必要です。
例えば、明確なミッションを共有していることで、早い決断や異質の尊重が実現できます。現代社会はスピード勝負ですし、企業にいる以上、正解のない決断の場面に何度も出会うことでしょう。その時に決してぶれないミッションがあれば、それに沿った決断を即時行うことができるのです。
また、異質を尊重することで思わぬシナジーが起こります。同質性の中からイノベーションは生まれない。喧嘩をしてもいいから他者と向き合わなくてはなりません。

イノベーターを生みだすための人材開発があると伺いました。

吉村 イノベーターとしてのアイデンティティを確立することです。イノベーターは強烈な原体験や高いアイデンティティを持っています。例えば、ホンダでエアバッグを開発した小林三郎氏は、本田宗一郎から「けっぱれ!」と肩を叩かれた原体験と、当時の久米社長からの薫陶を受けて「ホンダの安全を守る男」というアイデンティティを自らの中に確立していきました。こうした原体験とアイデンティティに支えられて、エアバッグの量産という夢に挑戦し続け、16年越しの思いを実らせたのです。
このように、アイデンティティを持たせてイノベーターを育てるには、上司の支援が不可欠です。上司が若者に、どんなビジョンとアイデンティティを与えるかで会社の未来は大きく変わります。

イノベーターとなるための第一歩を教えてください。

吉村 イノベーターたちはみな、他者の価値観に左右されない絶対価値を持っています。例えばホンダでは、「上司の命令だから」というだけの主体性のない仕事に対して、「おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか!」という定番のツッコミがあるといいます。人から指示されたことをそのまま実行するのではなく、一度自分の中で消化してみる。人から言われるだけの相対的価値に基づく仕事から、イノベーションは生まれません。
イノベーションとは、自分の中に根を下ろした絶対価値を形にすることなのです。これは自分の価値観に沿っていますから、主体的な仕事が生まれます。イノベーターとなるためには、決して譲ることのできない人生の基本的な価値観を見つけることが必要なのです。

最後に一言、メッセージをお願いいたします。

吉村 イノベーションとはイノベーターの創造意欲の賜物です。例えば、20年後の未来にどうなっているかは誰もわからない。そこで論理と分析を用いて考えてみても何も生まれません。理屈ではなく、感じることで情熱は湧き上がるのです。イノベーターには、自分の作りたいものを絶対に形にするという強い執念が何より必要なのです。このような若者の熱意を活かして、日本を引っ張って行ってくれるイノベーターを育成する企業が増えることを願っています。

ありがとうございました。

吉村慎吾(よしむら・しんご)

株式会社ワークハピネス 代表取締役
公認会計士。早稲田大学政治経済学部卒。
世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて数多くの本邦企業の国内株式市場及び米国株式市場への上場を支援する。途中、日本証券業協会店頭登録審査部(現JASDAQ上場審査部)上場審査官として多くの企業の上場審査も行う。
2000年4月、企業変革支援アウトソーサーである株式会社エスプールを創立、都内老舗ホテルの再建等、数多くのクライアントの成功を支援。同社2006年2月に株式上場。同年4月、企業研修及びマネジメントコンサルティングサービスを行う株式会社ワークハピネス(旧エスプール総合研究所)を設立。論理優先とは一線を画す実効性の高いコンサルティングにより数百社の変革を支援。
現在コンサルタント、経営者としての豊富な経験、行動心理学等への深い知識を活かし、イノベーションを起こす組織を増やしていくため、年間数十の講演等に取り組んでいる。