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著者インタビュー


『ヒューマシン・カンパニー 「人のような機械」と「機械のような人」が織りなす超精密加工の物語』

ナカヤマ精密株式会社 代表取締役社長 中山愼一 氏

新刊紹介

「これ、つくれないか」。研究者から次々と降ってくる難題難問に、絶対に「NO」と言わない企業が、大阪にあった――。
どんな難加工も決して断らず、スマートフォンから最先端医療関連機器まで、メイド・イン・ジャパンにこだわり、超精密加工の技術で日本のものづくりの現場を支えているナカヤマ精密。
ナカヤマ精密のスペシャリストたちが超極小ナノテクノロジーに挑み、葛藤した日々を通して技術大国・日本復興の現場を描いた書籍『ヒューマシン・カンパニー』が発行された。
本書の見どころと出版の経緯について、著者であるナカヤマ精密株式会社・代表取締役社長の中山愼一氏に話を伺った。


まずは、出版に至った経緯について教えてください。

中山愼一社長(以下、中山) ナカヤマ精密(以下、当社)は小さな部品を加工する企業ですが、当社が超極小ナノテクノロジーに挑み、模索した日々を通して、日本の“ものづくり”とそこに携わる人々の熱意と誇りを世の中に伝え、さらに、“ものづくり”の現場にもエールを送るために、本書の出版を決意しました。

技術大国・日本の復興に想いを寄せていらっしゃるようですね。

中山 日本の“ものづくり”を支えてきたのは、当社のような中小企業です。それが半導体不況やリーマンショック、円高などの影響を受けて製造現場は海外へと移り、多くの中小企業が消え、製造業は空洞化していきました。
しかし、日本の技術力、現場力の高さは世界に誇るべきものです。だからもう一度、製造業が攻めの姿勢で事業に取り組み、さらなる高みを目指せば、日本そして世界で生き残る術はいくらでも見い出すことができると考えています。そのために「メイド・イン・ジャパン」を守るという、日本のものづくり企業ならではの使命感を私はもっています。
加えて、日本の製造業が復興すれば雇用も増え、技術力の流出を防ぐことにもつながるでしょう。

超精密加工に求められるレベルは、想像がつきません。

中山 10億分の1m。それが超精密加工に求められる世界なのです。それは時に機械が、時に人間の指先が実現してきた世界です。本書では、そのμm(マイクロメートル)のさらに上である、「10億分の1m=1nm(ナノメートル)」、つまり「ナノテクノロジーの世界」を詳しくご紹介しています。

製造業者の全国大会「コマ大戦」九州くまもと場所で優勝されたそうですね。

中山 一見、「コマ大戦」と聞くと、お遊びかと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、このコマには、金型技術の粋が集約されています。特に精密加工が専門の当社にとって、小さなコマの作製は得意分野です。
全日本製造業コマ大戦は、中小企業が自社の技術とアイデアを注ぎ込んで作製した、直径20mm以下のコマを持ち寄り、一対一で戦う全国大会です。日頃は一般の人の目につきにくい製品や部品を製造するプロたちの技が、まさに小さな土俵の上でぶつかり合うのです。
中小企業製造業者は高い技術やノウハウをもっていても、自社のオリジナル製品がないことから一般の人に認知してもらう機会に恵まれません。このコマ大戦での優勝がきっかけでメディアから取材を受けると反響も大きく、「コマのナカヤマさんですね」と注目される機会が増えたのはうれしいことでした。

技術的に難しい加工のオーダーも持ち込まれるそうですね。

中山 どんなに難しい加工でも、限界にチャレンジする技術者魂、プライドと、そして経営理念である『お客様中心主義』の姿勢が、「『これつくれないか』にNOと言わない」という当社のモットーにつながっています。
実は現在、熊本大学の先生と共同開発を進めている「プロテオミクス装置」があります。これは簡単に説明すると、がん細胞やiPS細胞などに含まれる極少量のタンパク質を高度に自動検出する装置ですが、それまでオリジナル装置の開発実績もなく、まして医療分野での経験もありませんでした。
しかし、金型の精度が最終製品の品質を大きく左右し、極めて高度な加工技術が要求される装置のため、当社の技術力を先生には評価していただいていました。精密加工技術とノウハウには絶対の自信をもっている我われは「何が何でも完成させる」、その意気込みで取り組み、1号機を完成させました。

今、そのような職人的技術の継承は難しいのではないですか。

中山 当社では、技能オリンピック選手として活躍した人物で、抜型の世界ではかなりの有名人である人物が、技術顧問として後進の指導に力を注いでいます。1991年には労働省(現・厚生労働省)から『現代の名工(卓越した技能者)』に選ばれています。
まず当社に入社した若い技術者たちは、新入社員研修で技術顧問から指導を受けます。その内容は金属ブロックを手作業で磨き上げ、マイクロ単位での寸法合わせを行なうといういたってシンプルなもの。新入社員はここで5日間まるまるヤスリと格闘することで、手仕上げによるマイクロ単位の感覚を体に刻み込ませていくのです。
新人といえども、プロの指導を忠実に守ってヤスリがけを学ぶことで、10μm以下の精度が出せるようになるのです。しかし、ここでは技術に加えて「メンタルを鍛える」ことも大きな目的にしています。

最後に一言、メッセージをお願いいたします。

中山 先ほどお話ししたように、利益を追求することだけではなく、従業員の働き口を確保し、生活できる環境を提供し続けることが企業の社会的責任だと考えています。
海外に出て企業の利益率が上がった一方で、日本の従業員の働く場がなくなったのでは本末転倒ではないでしょうか。これは、当社が過去、半導体不況のあおりでリストラせざるを得なかった時の経験からも言えることです。
また、当社の納品先の90%以上は国内メーカーであり、部品を供給する企業として、「日本製」に対する責任感もあります。
そういった「メイド・イン・ジャパン」の“ものづくり”の技術力、現場力、プライドを本書で感じ取っていただければ幸いです。

ありがとうございました。

中山愼一(なかやま・しんいち)

ナカヤマ精密株式会社代表取締役社長。
1960年生まれ。大阪府出身。大学卒業後、製薬会社に勤務。その後、1987年、27歳でナカヤマ精密株式会社へ入社。生産管理や営業に従事し、1994年に熊本工場へ出向。熊本統括責任者を経て、2001年、代表取締役社長に就任。


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