インタビュー一覧

全87件中 1〜 30件を表示

著者インタビュー


『ホンマに、おおきに!』

元岡俊一氏

新刊紹介

「本質的には倒産に向かって突き進む要素を併せ持つ企業を、少しでも生き永らえさせる」
一人の経営者の強烈な危機意識が、小さな地場証券を大変身させた。
だんじり祭で知られる大阪・岸和田の地に、100年前、小さな証券会社が誕生した。100年後、この地場証券が業界の老舗・西日本最大規模の証券会社コスモ証券を買収した。
現在の「岩井コスモ証券」の誕生である。
業界の誰もが度肝を抜かれた3倍規模の買収劇を中心に、証券業界激動の100年を描いた著者渾身の一冊。著者である元岡俊一氏に、本書の見どころと出版の経緯について話を伺った。


まずは出版の経緯について教えてください。

元岡俊一氏(以下、元岡氏)もともと私は流通業界最大手・ダイエーの創業者・中内㓛氏の弟子として、『中内㓛・私の履歴書』(日本経済新聞社)、『流通革命は終わらない』(中内㓛著・日本経済新聞社)の執筆や編集に協力し、その後は、『中内㓛回想録』(中内学園流通科学大学)の編集などに取り組んでいました。そんな中、ご縁があって岩井コスモ証券の沖津嘉昭社長と知り合う機会があり、お話を伺う中で小が大を呑んだ大買収劇と沖津社長が取り組まれた大改革に魅せられ、岩井コスモホールディングス100周年の年に書籍の刊行を決めました。
タイトルの『ホンマに、おおきに!』はまさに感謝を込めた100周年のキャッチコピーでもあります。

岩井証券は100年前、机一つ、自転車一台で創業されたというエピソードが本書で紹介されています。

元岡氏 「株屋は客を騙す」と言われた時代に、そんな株屋のあり方とは決別し、誠実さをモットーに100年の礎を築いたのは創業者・岩井辰之助という青年でした。彼の意志を継ぎ、岩井証券は「岩井に無配なし」と言われるまでに南大阪を中心に発展を遂げました。昭和最後の相場師と呼ばれた畠中平八社長が有名な仕手戦で世間の話題をさらった時代や、「北浜に鶴が舞い降りた」と言われた元・大蔵官僚の前川憲一社長が活躍したバブル時代を経て、岩井証券はバブル崩壊後、存亡の危機に陥ります。

その後、加藤・沖津体制時代には、バブル崩壊後の大不況は「つくられた不況である」と沖津社長が言及しています。

元岡氏 その危機に直面した時、沖津嘉昭・現社長(当時専務)が采配を振るいました。千里眼の持ち主である彼が言い当てた予見の一つが、この「つくられた不況説」です。詳しくは本文に譲りますが、彼は当時の海部首相とブッシュ大統領による日米首脳会談のニュースを見るや、「必ず隠された真実がある」とその後の平成大不況を見事に言い当てました。リーマンショック後の不況の際にも「証券業界を襲う魔物」の存在に誰よりも早く気付き、同業者に警告を出しています。
沖津社長の予見は全部で三つあります。第三の予見(「ひょっとして日本経済はホントに復活するかも」)は提言といった方が相応しいもので、奇想天外なアイデアにびっくりされることでしょう。是非本書をご覧いただければと思います。

平成の大改革や規模3倍差と言われた大買収劇など、沖津社長の舵取りが本書の大きな見どころとなっています。

元岡氏 見どころは3つあります。ひとつは、他社に先駆けた全員参加型のコスト体質の改善。次に、月間部店別損益計算書の社内公開や取締役会の社員傍聴制度、更には人事考課の自己採点制度による「ディスクロージャー精神」の浸透。最後に、非対面型取引である「コール取引」や「ネット取引」への先駆的な取り組みによる全国的営業体制の確立です。
このような斬新な施策を推し進め、社長就任後、誰もが予想だにしなかった東証一部上場を果たします。そのスピード感は凄まじく、「変化しすぎてついていけない」と会社を去って行った社員も少なからずいたほどでした。一方で、コミュニケーションづくりにとポケットマネーで全社員と懇親会を開くような人情派でもある沖津社長の人物像にも触れながら、業界中を驚かせた一大買収劇の舞台裏を描きました。コスモ証券側の社員の率直な現場の肉声、息詰まる労使交渉の様子なども取材させていただきました。

最後に一言、メッセージをお願いいたします。

元岡氏 この本は単なる社史ではなく、私が2年6カ月をかけて磨き上げた、読みやすく、わかりやすい、事実に基づいた「物語」です。岩井証券、コスモ証券のそれぞれの100年を追いながら、証券業界全体の歴史も織り交ぜた一冊となっています。
大きな業界再編に3度も直面しながら100年生き残る企業の経営とはいかなるものか、証券業界がたどったこの100年はどのようなものだったのか。この物語の中心人物である沖津嘉昭氏は、43歳で異業種から転職し、干された2年間を耐え忍んでトップに上り、社長として何を考え、どのように行動したのか。周囲の人々は、どう考え、どう行動したのか。そんな一つひとつのエピソードは、証券業界に限らず、現代を生きる経営者やビジネスパーソンに何かしらのヒントを与えてくれるはずだと信じています。本書が少しでも読者の皆様のお役に立てば幸いです。

ありがとうございました。

元岡俊一氏(もとおか・しゅんいち)

株式会社ダイエー社長室副室長時代には、中内㓛氏の懐刀として、社内外での講演・講義活動や執筆活動を司った。その後、神戸市にある流通科学大学に転じ、流通資料館館長、サービス産業学部教授として中内㓛理念研究に従事した。主な仕事に、『中内㓛・私の履歴書』(日本経済新聞社)執筆や編集に協力、『中内㓛回想録』(中内学園流通科学大学)編集。


この内容で送信します。よろしいですか?