インタビュー一覧

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著者インタビュー


『未開封の包装史』

林 健男 著

スーパーに並ぶ野菜や果物、それらの包装紙には、意外な歴史や、包装紙を作る人たちのドラマがある。大阪にある老舗包装紙メーカー、株式会社精工。同社の歴史は包装紙の歴史でもある、これまでの歴史を記した『未開封の包装史』が発売された。今回は著者である、株式会社精工の代表取締役会長 林氏に、出版の経緯や本書の見どころについて、お話を伺った。


――まずは出版の経緯について教えてください。

林 健男氏(以下、林) おかげ様で精工は創業105周年を迎えました。様々な人との出会いと、いくばくかの幸運に助けられながら、100年以上もの間存続できた精工という会社が、どのような道筋をたどり、どこへ向かって行くのか、私自身も知りたいことであり、また、多くの人々に知ってもらいたいことでもあります。精工の歴史とともに青果物包装の歴史も振り返り、青果物包装を、さらには日本の農業を、ぜひみなさんに知っていただきたいと思い、出版を決意しました。

――本書では、青果物の鮮度を長期間保持するための最新の技術について触れられています。

林 技術の世界は日進月歩であり、おそらくみなさんがまだご存じない驚くべきテクノロジーが数多く実用化されています。パッケージングも当然、鮮度保持技術の一つではありますが、収穫後の鮮度保持の部分だけに限らず、収穫から物流・流通にまたがる過程を追いながら、お客様の食卓に安全でおいしい青果物をお届けする仕組みにも力を注いでいます。執筆にあたってはそのあたりについても、詳しく述べました。すべての消費者に安心で安全な食を提供するために、生産者・流通業者・販売店がどれほどの努力と工夫を重ねてこられたかについても読者に知っていただき、その中で我われ精工が果たす役割についてもご理解いただければ、著者としてこれに勝る喜びはありません。

――日本の農業についても言及されていますね。

林 日本の農業がもうからなければ、我われ精工のビジネスもまた成り立たなくなります。そこで、農家の皆さんの経営が安定しその結果、多くの人が農業というビジネスに魅力を感じて農業従事者の道を選んでもらえるように、我われは我われなりに力を尽くしていきたいと考えています。もちろん、農産物包装業者である精工にできることは限られています。畑に出て農作業を手伝ったり、品種改良をしたり、収穫物を高く買い取ったりというわけにはいきません。その代わり、パッケージを通じて出荷された農産物の鮮度保持に貢献し、流通を支えるとともに、農産物の付加価値を高めることで少しでも高値で売れるように手助けすることはできます。また、消費者に対しては食の安全を担保し、家庭での調理や保存のために役立つ情報を提供することもできます。パッケージを通じたサポートによって、日本の農業を微力ながらも支え、共存共栄を図っていきたいと考えています。

――今後の展望について教えてください。

林 一言でいえば、海外を視野に、ということになりましょうか。日本国内だけでなく、海外でも日本のパッケージ技術は通用すると思っています。そもそも日本の農業物は世界でもトップクラスですから、現地へ行って生産するのもいいですし、TPPが発効したら海外へ国産の農産物を輸出してもいいのです。鮮度保持できるパッケージがあれば海外へ輸出しても十分日持ちするため、国産品の需要はあります。あるいはパッケージ技術自体を輸出して、現地で包装材を作ってもいいです。精工のこれからの課題ですね。

――最後に一言、メッセージをお願いいたします。

林 ここ数年、TPPや食の安全に関して様々な報道がなされています。本書の執筆中にも、フィルムによる青果物のパッケージに比べてはるかに厳重に密封されているはずの「缶詰」に異物が混入する事件が報道されました。加工食品でさえ「食の安全」を脅かす事件が現実に起きているのだから、我われの扱う生鮮食品は、なお一層の細やかな神経が要求されるのは言うまでもありません。青果物のパッケージは、単に見た目を美しく装うだけでなく、その鮮度を保ち、より安全な品質を維持しなければならないと思います。そのためにも、今後も立ち止まることなく改善・改良を重ねていくつもりです。この本をお読みになった方々が、スーパーや青果店の店頭で、包装された青果物を手に取られる際に、ふと、パッケージや日本の農業について、思い出していただければ幸いです。

ありがとうございました。

林 健男(はやし・たけお)

1947(昭和22)年11月1日生まれ。1970(昭和45)年慶應大学商学部(村田ゼミ)卒業。同年全国購買農業協同組合連合会(全購連/現・全農)入社。1973(昭和48)年に退社し、株式会社精工に入社。1981(昭和56)年専務取締役に就き、1983(昭和58)年にグループ会社である精工プロダクト株式会社を設立。2000(平成12)年に株式会社精工代表取締役社長、2016(平成28)年に代表取締役会長に就任し、現在に至る。


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