インタビュー一覧

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著者インタビュー


『最適物流の科学』

菅 哲賢 著

2016年、世界第7位の大手船会社が倒産、2017年には日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社が統合、「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」を設立し、日本で外国定期航路を持つ船会社は1社となった。
不況のあおりを受けている船会社だが、その原因にあるのはコンテナ船の大型化による輸送費の下落である。このまま輸送費が下がり続ければ日本の船会社はおろか、世界の大手船会社ですらその存続が危ぶまれる。
「船を持たない船会社」として物流の最前線で活躍する著者が、物流業界に一石を投じたいと、物流業界の問題点を指摘した『最適物流の科学』が発売された。
著者は、大手の資本が入っていない個人独資の海運業者として、既存顧客ゼロからスタートし、まったく知名度がない状態から、一社一社地道に新規顧客の開拓を続けた結果、2016年度日本発北米向け取扱本数NVOCC 世界ランキング6位(9,627TEU)にまで成長させた。今や日本の海運業界をリードするジャパントラスト株式会社 代表取締役社長の菅氏。今回は、出版の経緯や本書の見どころについて、お話を伺った。


――まずは出版の経緯について教えてください。

菅 哲賢 氏(以下、菅) 私は22年間で2万8,000人を超える方々と名刺交換をしてきました。そうした皆さんとの多くの出会いが、私の仕事の糧となってきました。そして、数多くのお客様との出会いの中で、私はさまざまな経験、知識を得ることができました。同時に、業界の内外を見据えるための広い視野を身につける機会にもなりました。そうした所産が本書を執筆するにあたっての大きな基盤となっています。
こうして生まれた本書の執筆を、私が思い立った理由は二つあります。
一つは国際物流、特に海上輸送の実情について、物流関係者のみならず多くの他業界の方々に知ってもらいたかったという動機です。国際物流に関わる会社はたくさんありますが、各会社がどんな業務に携わっているのかを明確に答えられる人は多くないでしょう。また各社のホームページやパンフレットを見ると、多くの会社がさまざまなサービスを請け負うことを謳っており、サービス内容の差がわかりづらくなっているという現状もあります。
そこで数ある国際物流業者の中で、どの事業者に委託するのがよいのか、何を基準に事業者の実力を判断すべきか、という視点から業界の全体像を描いてみました。中でも一般にはあまり知られていないフォワーダーという業態に力点を置いて解説しました。
荷主にとってどの事業者が最適かというところに立脚した点で、これから国際物流に携わろうとしている人たちの教科書的な本として、一般的なビジネス書とは違った視点を提供できたのではないかと思います。
もう一つの理由が、国の存亡にかかわる海運業界の現状に一石を投じたかったということです。本書の中で再三述べてきましたが、海運業界は現在、不況という荒波の真っ只中にあります。特に、船会社は非常に厳しい状況に置かれています。行き過ぎた自由競争により、全船会社に赤字が続き、船会社が吸収合併や破綻によってここ数年で半数近くにまで減少した状況は、決して健全とはいえません。荷主も、船会社が赤字に陥るほどの安い運賃は望んでいません。荷主に懸念を抱かせるレベルまで運賃が下がってしまっているのが現状なのです。

――船会社の統合や倒産が続いている海上物流業界ですが、その原因について教えてください

 目まぐるしく業界再編が進む背景には、海運業界が厳しい不況の波にさらされているという現状があります。不況をもたらした一因として、コンテナ船の大型化による船腹量の増加が挙げられます。輸送効率を上げてコスト削減を追求したことが船腹の供給過剰と運賃下落をもたらし、結果として経営を圧迫するという悪循環の渦中にあるのです。
 マーケットレベルがあまりにも低下してしまった現状に対して、強い危機感も抱いております。値下げを求めながらも、これ以上船会社の経営を圧迫するようなことは避けたいとの思いがあるのです。実際のところ、荷主からのご要望に応じて、健全に会社を運営する商権維持のために仕方なく値下げ交渉を行なっているのが現状です。

――「フォワーダー(船を持たない船会社)」の特長を教えてください。

 国際物流業界には、船や航空機を持たずに貨物輸送を請け負う事業者が存在します。それがフォワーダーです。業種を問わずアウトソーシング化、分業化の傾向がある今、物流業界でこれを実践するフォワーダーへの関心が高まっています。
 フォワーダー(フレイト・フォワーダー)とは、荷主から貨物を預かり、他の事業者の運送手段を利用して運送する貨物利用運送事業者を指します。そのうち、国際輸送を取り扱う事業者をフォワーダーと呼ぶのが一般的です。
その具体的な業務については、物品の運送、混載、保管、荷役、包装、配送及びこれらに関する業務、そして税関手続や納税手続のための申告をすることも含まれています。
 このように、フォワーダーの業務範囲は多岐にわたります。荷主の側からすると、輸送や通関といった業務をすべてワンストップでアウトソーシングできる頼りになる存在ということになります。
 自社で船舶や倉庫などを所有するのではなく、スペースをチャーターし、目的地までの最適なルートを定めて貨物を運ぶ、利用運送業ですのでさまざまな輸送手段を組み合わせることで、お客様の幅広いニーズに柔軟に対応することができます。

――最後に一言、メッセージをお願いいたします。

 遥か昔から、地球の約七割は海に覆われています。広大な海を、人や物を乗せて行き来し、世界と世界を繫いできた海運業界。それは今も、今後も変わりません。 
その広大な大海原というステージは、世界経済を動かす、まさに大動脈と言える存在です。このステージで膨大な量の物を動かす海運業の重要性は、今後も変わることはないと断言できます。
ビジネスの世界でどんなにIT化が進んでも、実際に物を運ぶ産業がなくなることはありません。私は、フォワーダー(NVOCC)業を長年営んできた経験から、海運業が世界経済、社会基盤を支える夢のある非常に重要な産業であると確信しています。海運業は、人類の発展に欠かせないといっても過言ではないでしょう。
海運業界が従来の活気を取り戻し、ひいては荷主に利益が還元される。本書が、そうした好循環を生み出すきっかけになることを願うばかりです。

ありがとうございました。

菅 哲賢(すが・てつまさ)

1971年京都府生まれ。南山大学卒業後、YKK株式会社入社。貿易会社を経営する父親の影響を受け、1995年、24歳の時に脱サラして共同経営者として「船を持たない海運業者」(NVOCC)ジャパントラスト株式会社を設立。2000年、29歳の時に同社代表取締役社長に就任。2002年に米国現地法人Great Luck Inc. 設立。大手の資本が入っていない個人独資の海運業者として、創業当初は、既存顧客ゼロからスタート。初年度の取扱コンテナ量はほぼ0本。まったく知名度がない状態から、一社一社地道に新規顧客の開拓を続けた結果、2016 年度日本発北米向け取扱本数NVOCC 世界ランキング6位(9,627TEU)にまで成長させる。その過程で、荷主、乙仲(通関業者)、国内外の船会社、物流業者、フォワーダー、NVOCCと交わした名刺の数は、28,000枚以上にのぼる。また、大手外資系船会社の本国にある本社を定期的に歴訪し、世界各国の船会社の本社にも直接交渉するパイプを持っている。貿易業を営む父親(荷主)の言動に幼少期から慣れ親しんでいたため、荷主の立場をよく理解している。常に荷主の利益・利便性と輸送品質・安全性を最優先に考えてくれると、大手荷主からも評判となっている。
趣味は、マジック、サーフィン、麻雀。