――まず、本書出版の目的を教えてください。
百瀬氏(以下、百瀬) 2023年5月、ワイエイシイは創業から50周年を迎えました。創業50周年の記念出版として、これから起業を目指している方、すでにベンチャー企業を起こした方、また、会社を経営していて、行き詰っている方の背中を押せるような書籍にしたいと思い筆を執りました。本書は私の4冊目の著書となりますが、過去の3冊の書籍で著してきた企業経営に関する内容をまとめると同時に、アップデートされ続ける私の思考を詰め込みました。まさに私の「半世紀にわたる経営経験の集大成」と言える一冊になっています。
――ワイエイシイを創業されてから50年。これまでを振り返って率直な感想はいかがですか。
百瀬 ワイエイシイは1973年5月11日、5名の創業メンバーによって設立されました。私を含む5名の設計技術者で、子会社への出向を機に独立して、ワイエイシイ株式会社を立ち上げたのです。設計の請負業務を行なうスタートアップ企業として、8畳ほどの事務所から歩みを始めたワイエイシイは、半世紀を経た現在、傘下12社と海外の孫会社4社を抱えるホールディングス体制となり、グループ社員数1000名超、東証プライム市場の指定銘柄となりました。50年の道程は、長いようで短く、短いようで長かったというのが私の実感です。その間企業経営にとって大逆風が吹き荒れた時もありました。しかし、振り返ってみると、経営者として成長への執念の火を燃やし続け、結果的に“おおむね順調”と言ってもよい歩みを続けられたのだと思います。
――会社を成長させ続ける経営者の秘訣についてお聞かせください。
百瀬 企業の命運は結局のところ「社長の情熱と執念」にゆだねられると考えています。社長が夢をもち、情熱と執念をもってその夢を叶える綿密な戦略を立てる。そしてその夢と戦略を社員に語ることで、仕事へのやりがいが向上し、とてつもなく大きな力を発揮してくれることを、私は株式の店頭公開を果たしたときに実感しました。社長が情熱と執念をもって、目標に向かって真一文字に進んでいく姿を見せてこそ、社員たちも本気になってくれるのです。経営にまつわる小手先の知識やテクニックよりも、まず情熱と執念をもつことがなによりも大切なのです。
――最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
百瀬 ワイエイシイを創業してからの半世紀の歩みこそが、経営にかかわるすべての人へのメッセージです。私の歩みの中に経営に必要な知恵と経験がちりばめられています。本書が少しでも皆様の経営改善の、そして企業を志す人の背中を押すことができることを願っています。
百瀬武文(ももせ・たけふみ)
長野県松本市出身。長野県松本工業高等学校卒業。1973年5月、ワイエイシイ株式会社を設立、代表取締役社長に就任。1994年6月、日本証券業協会に株式を店頭登録。2006年10月、東京証券取引市場第二部に上場。2007年12月、東京証券取引市場第一部に指定される。2017年4月、ワイエイシイ株式会社のホールディングス化に伴い、ワイエイシイホールディングス株式会社代表取締役社長に就任。2022年4月、東京証券取引所の新市場区分への再編により、プライム市場へ移行。主な著書に『町工場的発想から脱却せよ』(幻冬舎ルネッサンス・2008年)、『「全員参加」の会社が成功する』(幻冬舎ルネッサンス・2013年)、『未上場企業への光明』(WAVE出版・2018)がある。