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BATON バトン

BATON バトン

大塚達也・川端克宜 著

2024.10.1

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「殺虫剤」という呼び名を「虫ケア用品」に変えたアース製薬株式会社。会社設立100年を迎え、さらなる成長を続けている。現在、会社を取り仕切る川端克宜社長だが「アース製薬が100%自分に合っている、とか、これが天職である、などとは思ったことがない」と言い切る。では、どうやって社長にまで上り詰め、会社の業績を上げることができたのか? 川端社長の半生を振り返りつつ、伺ってみた。

――まず、本書の出版目的について教えてください。
川端克宜社長(以下、川端) アース製薬株式会社は、2025年に設立100周年という節目を迎えます。数多くの先輩諸氏によって積み重ねられた歴史を受け継ぎ私たちはここまで来ました。そして、次の100年に向かって新しい一歩を踏み出すにあたり、現在のアース製薬の姿を文章で表そうと考え、本書をまとめることにしました。
 
――学生時代の就職活動で、アパレル業界の企業に内定していたと聞いています。それなのに、なぜ畑違いのアース製薬に進まれたのでしょうか?
川端 まったくの偶然でした。当時、付き合っていた女性の自宅に伺った時のことです。私は約束の時間を間違え、彼女の家に早くついてしまいました。彼女は不在で、待っていたのはご両親。そこで、お父さんから就職活動のことを聞かれ、「アパレルにいこうと思っています」と答えました。 ところが後日、彼女と話していた際に「(アパレル業界)何とかならへん?」ということになりました。お父さんの心証が悪かったのかもしれないし、何よりアパレルが本当にやりたかった仕事なのか、よくわからなくなりました。 仕方なく大学の就職部に行き、ファイルの企業をアイウエオ順に見ていって、最初のほうにあったアース製薬でいいや…ということで受けに行きました。それが今日につながったのです。
 
――そんなサラリーマン人生の中の1995年1月17日、阪神・淡路大震災が起こりました。
川端 私は当時、大阪支店で働いていましたが、支店管轄に神戸出張所がありました。いうまでもありませんが、壊滅的な被害を受けました。当時、仲が良かった一つ上の先輩と2人で、連絡が取れない社員を訪ねて回りました。 担当エリアを回り始めたのは、震災から1カ月以上経ってからのことでした。交通のインフラの回復ともども、支店機能が元通りになり、普通に営業訪問できるまでに1年以上かかったと思います。 未曾有の震災は、忘れられない記憶ではありますが、新入社員なので心理的な影響はあまりなかったように思います。まだ研修を受けている途中のようなものだったので、どこまでが通常の仕事なのか、この先の業務への影響はどうなのかなど、よくわかっていなかったのだったと思います。
 
――そういった形の入社だったのに、42歳という若さで社長になれたのは?
川端 私は学生時代、正直なところ、まったく勤勉ではありませんでした。……要は普通の大学生活を送っていたのです。 ただ自分の特徴として「要領は良かった」といえるのではないかと思います。今でも当時の友達や先輩との付き合いがあるのですが「とにかく集団でこなしていく」という仲間意識は強かったです。つまり、いい人間関係を築くことができたからだと思います。いろんな人を巻き込んで役割分担をしっかりして、手分けして課題に取り組む……そのような仲間意識は強かったからではないかな、と思っています。やはり人に恵まれた、といえるでしょう。会社との縁、人の縁、それが私を支えてくれたのです。
 
――その後、海外やそのほかの買収事業なども展開されていきました。
川端 社長に就任し、グローバル事業拡大を宣言しました。もともとあったタイに加え、新しく中国に販売会社を設立しました。これを皮切りにベトナムの会社を買収して子会社化し、さらにミャンマーでも駐在員事務所をつくり、マレーシア、フィリピンにも進出しました。 一方では、国内においても白元などのM&Aを手掛けました。「殺虫剤」という呼び名を「虫ケア用品」に変え、この言葉を世に広めました。CI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新しつつ、今日に至っています。
 
――最後に、同書を読んでいる読者、特に就職活動中の方々にメッセージをお願いいたします。
川端 「『縁』や『出会い』は大事である」ということですね。若い社員や入社希望の学生たちと本音で話すことがありますが、会社を選ぶ理由は「その会社がいい事業をしている」などということではなく、聞いたことがある会社かどうかが大きいのではないでしょうか。 今の新入社員たちにもそう話します。面接であんまり格好をつけて、「御社の事業は~」などと話す必要はありません。会社の事業概要を詳しく調べてくれていることはありがたいし、非常に大事なことではあるけれど、決め手は「この会社に入りたい!」でいいんです。「有名だし、良い会社だと思う」というだけで。


川端克宜(かわばた・かつのり)
1994年3月 アース製薬株式会社入社 2011年3月 同役員待遇 営業本部大阪支店支店長 2013年3月 同取締役 ガーデニング戦略本部本部長 2014年3月 同代表取締役社長(兼)ガーデニング戦略本部本部長 2015年8月 同代表取締役社長(兼)マーケティング総合戦略本部本部長 2019年3月 株式会社バスクリン取締役会長(現在) 2021年3月 アース製薬株式会社 代表取締役社長CEO(現在)       白元アース株式会社 取締役会長(現在)       アース・ペット株式会社 取締役会長(現在)       アース環境サービス株式会社 取締役会長(現在)
 
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大塚達也・川端克宜 著

2024.10.1

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