――まずは、御社について教えてください。
瀬古氏(以下、瀬古)創業以来、中央開発は地盤調査のパイオニア企業として、公共施設や工業地帯の埋立地、道路・トンネル・ダムなど数多くの地盤調査を手掛けてきました。
その場所にどれだけの規模の建造物を建てられるか、そのためにはどれだけの範囲にわたってどれだけの深さの地盤改良(杭打ちなど)をしなければならないか、といった地盤調査を行なうことは、地盤沈下や液状化などのリスクを回避し、安全・安心な建造物を造るために不可欠な作業です。
また、1995年の阪神・淡路大震災を一つのきっかけとして、大規模災害の被害調査や防災関連の事業にも取り組んでいます。特に、土砂崩れや地滑り、土石流などの斜面災害をリアルタイムで監視する技術は、近年国内外でしばしば発生している地震や豪雨などの被災地で採用されており、さまざまなかたちで社会貢献に努めています。
――なぜ本書の出版を決めたのでしょうか。
瀬古 中央開発創業70周年を節目として当社の過去から現在までを振り返り、豊かでもあり厳しい自然の環境の中でこれから先の日本の未来を考え、つくりあげていきたいという想いから発行しました。創業者の瀬古新助が生前に執筆した著書や、当時を詳しく知る社友の諸先輩から伺った話を基に、当時の状況を掘り起こし、また、国内外の第一線で活躍中の社員からも個々に苦労や想いを聞き、とりまとめました。
――本書のタイトルにもなっている「土と水」について教えてください。
瀬古 中央開発の原点である地盤調査に直接関わってくるのが、「土」と「水」です。
創業者瀬古新助はその著書のタイトルに『土と水』と命名したほどです。創業当初の事業が、この二つにいかに翻弄され、また技術者たちがいかにこの二つに真摯に取り組んできたかを物語るものでしょう。
含水量が土の性状を変えてしまうがために地盤調査の必要性が生まれるのだということを考えれば、土と水は我われの仕事にとって生みの母ということもできます。その反面、土中に含まれる水分が、地盤調査やそれに続く施工を極めて困難なものとすることを考えれば、地下水は我われの仕事の上で、ある意味最大の敵ということもできます。
いずれにせよ、当社の歴史は「土と水」抜きにしては語れないのです。
――現場で戦う技術者たちの写真が印象的です。
瀬古 創業当時の現場では、大学で土木や建築を学んだ人や大学院修了の修士といった高学歴の人たちが、土と泥水と機械油にまみれて働いている姿が珍しくありませんでした。
当社では、現在でも新入社員には一定期間、現場を経験させています。現場に真理があり、真実があるからです。
今の若い人たちにも先代の社員たちがいかに苦労し今の中央開発を築きあげたのかを伝えたくて、当時の写真をたくさん掲載しました。
ーー最後に一言、メッセージをお願いいたします。
瀬古 当社の事業の性質上、一般の皆様にはなじみの薄い専門用語なども出てきます。技術的に説明不足のところや背景説明などで、行き届かぬ部分もあるかもしれませんが、普段は目に触れない地質・地盤・地下水などについて多少なりともご理解いただけるなら幸いです。
ありがとうございました。